歴史を書くこと ー 「08 憲章」 (2008年12月10日発表)

「08 憲章」
2008年12月10日発表

一、前置き
今年は中国立憲百年、「世界人権宣言」公布60周年、「民主の壁」誕生30周年であり、中国政府の「市民的および政治的権利に関する国際規約署名10周年である。長期にわたる人権への災禍に対する、艱難に満ち、曲折した願いの道程を経て、覚醒した中国の公民は、自由・平等・人権が人類共通の普遍的価値であり、民主・共和・憲政が現代政治の基礎的な制度の枠組みであることを、日増しにはっきりと認識しつつある。これらの普遍的価値と基本的な政治制度の枠組みを引き離した「現代化」は、人間の権利を剥奪し、人間性を堕落させ、人間の尊厳を踏みにじる災禍の過程である。二十一世紀の中国がどのような方向に進むのか、このような権威主義統治による「現代化」を継続するのか?それは、回避する余地のない選択である。
十九世紀半ばの歴史の急激な変化は、中国の伝統的な専制制度の腐敗を...暴露し、中華の大地における「数千年来かつてないほどの大変動」の序幕を開いた。洋務運動は、器のレベルでの改良を追求しただけで、甲午戦争(日清戦争)での敗北は、体制が時代遅れであることを再び暴露した。戊戊の変法は、制度面での革新に触れたが、結局は、頑固派の残酷な鎮圧によって失敗に帰した。辛亥革命は、表面的には、2000年あまり続いた皇権制度を埋葬して、アジアで最初の共和国を建国した。しかし、当時の内憂外患という特定の歴史的条件に制約され、共和の政体は、一時的現象で終わり、専制主義は捲土重来したのである。器の模倣と制度の更新の失敗は、国民に文化的病根に対する省察を促し、ついに「科学と民主」を旗に掲げた「五四」新文化運動が起こったが、内戦の頻発と外敵の侵入により、中国政府の民主化の過程は、中断を強いられた。抗日戦線勝利後の中国は、再び憲政の歩みをしかし国共内戦の結果は、中国を現代における全体主義の深淵に陥れた。1949年に建国された「新中国」は、名義上は「人民共和国」だが、実質的には「党の天下」であった。政権政党は、あらゆる政治・経済・社会資源を独占し、反右派闘争、大躍進、文化大革命、六四事件および、民間の宗教活動や合法的な権利擁護の運動の抑圧などの一連の人権の災禍を引き起こし、数千万人の生命を奪う結果となり、国民と国家は、いずれも大きな代価を支払わされた。
二十世紀後期の「改革開放」は、中国を毛沢東時代の普遍的な貧困と絶対的な全体主義から抜け出させ、民間の富と民衆の生活水準は、大幅に向上し、個人の経済的自由と社会的権利は、部分的に回復し、市民社会は、成長し始め、民間における人権と政治的自由を求める叫びは、日増しに高まっている。為政者も、市場化した私有化に向かう経済改革を進めると同時に、人権の拒絶から、しだいに人権を承認するように変わってきた。中国政府は、1997年と1998年に、それぞれ二つの重要な国際人権条約に署名し、全国人民代表大会は、2004年の憲法改正で「人権の尊重」を憲法に書き入れ、今年はまた「国家人権行動計画」の制定と遂行を承認した。しかし、これらの政治的進歩は、現在に至るまで、その殆どが紙の上に留まっている。法律はあっても法治はなく、憲法はあっても憲政はなく、依然として誰もが認める政治の現実があるのだ。
執政集団が、引き続き、権威主義統治を維持し、政治的変革を拒むことで、官僚の腐敗を招き、法治は実現し難くなり、人権は明らかにされず、道徳は失われ、社会は二極分化し、経済は不均衡な発展をし、自然環境と人文環境は二十に破壊され、公民の自由・財産・幸福追求の権利は、制度的保障を得られず、各種の社会矛盾が絶え間なく蓄積され、不満は高まり続けて、特に官民対立の激化と群衆の突発事件の激増は、まさに壊滅的な制御不能の趨勢をみせており、現体制の落伍はすでに改めざるを得ない事態にまで至っている。

二、我々の基本理念
中国の未来の運命を決定するこの歴史の岐路に立ち、百年来の近代化の歩みを省みて、下記の基本理念を再び言明する必要がある。<自由> 自由は、普遍的価値の核心である。言論・出版・信仰・集会・結社・移動・ストライキデモ行進などの権利は、いずれも自由の具体的な表現である。自由が盛んでなければ、現代文明に値しない。
<人権> 人権は、国家が賜与するものではなく、すべての人が生まれながらにして有している権利である。人権の保障は、政府の最も重要な目標と公権力の合法的な基礎であり、「以人為本(人をもって本とす)」に内在する要求である。中国のこれまで幾度にもわたる政治の災禍は、いずれも政権当局の人権無視と密接に関わっている。人間は、国家の主体であり、国家は、人民に奉仕し、政府は人民のために存在するのだ。
<平等> すべての個人は、社会的地位・...職業・性別・経済状況・人種・肌の色、宗教あるいは政治的信条に関わらず、その人格・尊厳・自由は、いずれも平等である。法律の下ですべての人は、平等であるという原則は、必ず徹底されんばければならず、公民の社会的・経済的・文化的・政治的権利の平等の原則が徹底しなければならない。
<共和> 共和とは、「みなが共同で統治し、平和に共生する」ことである。すなわち分権による抑制的均衡と利益の均衡であり、多くの利益の構成要素・さまざまな社会集団、多様な文化と信条を追求する集団が平等に参与し、公平に競争し、共同で政治を議論するという基礎に立ち、平和的な方法で公共の事務を処理することである。
<民主> 最も基本的な意味は、主権在民と民選政府である。民主は、次のような基本的特徴がある。(1) 政権の合法性は、人民に由来し、政治権力の源は人民にある。(2) 政治的統治は、人民の選択により決定される。(3) 公民は、真の選挙権を所有し、各級政府の主な政務官は必ず定期的な選挙によって選ばなければならない。(4) 多数の決定を尊重し、同時に少数の基本的人権を保護する。ひとことで言えば、民主とは、政府を「民が有し、民が治め、民が享受する」現代の公器にすることである。
<憲政> 憲政は、法律の規定と法治によって、憲法が定めた公民の基本的自由と権利を保障する原則であり、政府の権力と行為が及ぶ限界を定め、さらに相応する制度的措置を提供するものである。


中国では、帝国皇権の時代はすでに過ぎ去り、再び戻ることはない。世界的にも、権威主義体制は、黄昏時を迎えている。公民は、正真正銘の国家の主人になるべきなのだ。「明君」、「清官(清廉で公正な官吏)」を頼りにする臣民意識を払いのけて、権利を基本とし、参与を責任とする公民意識を発揚し、自由を実践して、自ら民主を行い、法治を尊重することこそが、中国の根本的な活路なのだ

 

三、我々の基本的主張
これにより、我々は、責任を担う建設的な公民の精神に基づいて、国家の政治制度、公民の権利と社会発展の各方面について、以下の具体的な主張を提起するものである。

1、 憲法改正。前述した価値理念に基づいて憲法を改正し、現行の憲法の中で主権在民の原則と一致しない条文を削除し、憲法を正真正銘の人権の保証書と公権力の許可証にし、いかなる個人・団体・党派も、違反してはならない実施可能な最高法律とし、中国の民主化ために法的権利の基礎を固める

2 分離の抑制的均衡;分離の抑制的均衡がなされた現代的政府を構築し、立法・司法・行政の三権分立を保証する。法が定める行政と責任政府の原則を確立し、行政権力の行き過ぎた拡張を防止する。政府は、納税者に対して責任を負う。中央と地方の間に分権と抑制的均衡の制度を確立し、中央の権力は、必ず憲法によって、...その授権範囲に明確な線引きが行わなければならず、地方は充分な自治を実行する。

3 立法による民主;各級の立法機関は、直接選挙によって選出され、立法は、公平正義の原則を堅持し、立法による民主を実行する。

4 司法の独立;司法は、党派を超越し、いかなる関与も受けてはならず、司法の独立を実行し、司法の公正を保障する。憲法裁判所を設立し、違憲審査制度を確立し、憲法の権威を擁護する。できるだけ早く国家の法治に重大な危害を及ぼす党の各級政法委員会(法律や執行に関わる党内組織)を解散させ、公器の私用を防止する。

5 公器の公用; 軍隊の国家化を実現する。軍人は、憲法に尽くすべきで、国家に忠誠を尽くし、政党組織は、軍隊から退出すべきであり、軍隊の職業化のレベルを高める。警察を含むすべての公務員は、政治的中立を保持すべきである。公務員採用における党派の差別を除去し、党派の区別なく平等に採用すべきである。

6人権の保障; 確実に人権を保障し、人間の尊厳を守る。民意の最高機関に対し責任を負う人権委員会を設立し、政府が公権力を乱用して人権を侵害するのを防止し、とりわけ公民の身体の自由を保障し、いかなる人も、不法な逮捕・拘禁・召喚・尋問・処罰を受けないようにし、労働教養制度を廃止する。

7 公職の選挙; 全面的に民主的な選挙制度を推進し、一人一票の平等な選挙権を確実にする。各級の行政首長の直接選挙は、制度化して逐次推進させるべきである。定期的な自由競争選挙と、公民が法廷の公職へ選挙で参加することは、剥奪してはならない基本的人権である。

8 都市と農村の平等; 現行の都市と農村の二元戸的制度を廃止し、公民として一律に平等憲法上の権利を実現し、公民の自由な移動の権利を保障する。

9 結社の自由;公民の結社の自由を保障し、現行の社会団体の登録審査許可制を届出性に改めてる。結党の禁止を撤廃し、憲法と法律により政党の行為を規範化し、一党が独占する執政的特権を廃止し、政党活動の自由と公平な競争の原則を確立し、政党政治の正常化と法制化を実現する。

10 集会の自由;平和的集会・行進・デモ・示威行動や表現の自由は、憲法が定める公民の基本的自由であり、政権政党と政府による不法な干渉や違憲の制限を受けるべきではない。

11言論の自由;言論の自由・出版の自由・学問の自由を実現し、公民の知る権利とと監督権を保障する。「新聞法」と「出版法」を制定し、報道規制を撤廃し、現行の「刑法」にある「国家政権転覆扇動法」の条項を廃止し、言論の処罰を根絶する。

12 宗教の自由; 宗教の自由と信仰の自由を保障し、政教分離を実行し、宗教および信仰の活動は、政府の干渉を受けない。公民の宗教の自由を制限、あるいは剥奪する行政法規・行政規則・地方の法規は、審査して撤廃する。行政の立法により、宗教活動を管理することを禁止する。宗教団体(宗教活動の場所を含む)は、登記されなければ合法的な地位は獲得できないという事前許可制度を廃止し、その代わりに、いかなる審査も必要としない届出制とする。

13公民教育;一党統治に奉仕し、イデオロギー色が濃厚な政治教育と政治試験を廃止し、普遍的価値と公民の権利を基本とする公民教育を普及させ、公民意識を確立し、社会に奉仕する公民の美徳提唱する。

14 財産の保護; 私有財産の権利を確立して保護し、自由で開放的な市場経済制度を実施し、創業に自由を保障し、行政による独占を排除する。民意の最高機関に対して責任を負う国有資産管理委員会を設立し、合法的に秩序のある財産権の改革を展開させ、財産権の帰属と責任者を明確にする。新土地制度を繰り広げ、土地の私有化を推進、公民、とりわけ農民の土地所有権を適切に保障する。

15財税改革; 民主的な財政を確立し、納税者の権利を保障する。権限と責任が明確な公共財政度の枠組みと運用メカニズムを構築し、各級政府の合理的かつ効果的な財政分権体系を構築する。租税制度に対して大改革を行い、税率を下げ、税制を簡素化し、税の負担を公平にする。社会的な公共選択のプロセスや民意機関の決議を経ずに、行政部門が思うにまかせて増税や新税の徴収をしてはならない。財産権の改革によって、多元的な市場の主体と競争のメカニズムを導入し、金融に参入する敷居を低くし、民間の金融を発展させるために条件を作り出し、金融システムに充分に活力を発揮させる。

16社会保障; 全国民をカバーする社会保障体制を構築し、国民に教育・医療・養老・就業などの面において最も基本的な保障を得られるようにする

17 環境保護; 生態環境を保護し、持続可能な発展を提唱し、子孫と全人類のために責任を負う。国家と各級の公務員は、そのrために担うべき相応の責任を明確に実行する。民間組織の環境保護における参加を促し、監督機能を発揮させる。

18連邦共和;平等・公正の選挙で地域の平和と発展の維持に関与し、責任ある大国のイメージを形成する。香港・マカオの自由制度を維持する。自由民主の前提の下に、平等な交渉と相互の協力により、海峡両岸の和解案を追及する。大いなる知恵で各民族が共に繁栄する可能な道筋と設計を探求し、民主憲法の枠組みのもとに中華連邦共和国を樹立する。

19正義の転換;これまで幾度もなくなされた政治運動のために政治的迫害を受けた人々、その家族の名誉を回復し、国家賠償を与える。すべての政治犯と良心の囚人を釈放し、信条のために罪に問われたしべての人々を釈放する。真相調査委員会を設立し、歴史的事件の真相を究明し、責任を明らかにし、正義を広める。その基礎の上に社会の和解を探求する。

四, 結語
中国は、世界の大国として、国連安全保障理事国の一つとして、また人権理事会のメンバーとして、人類の平和事業と人権の進歩のために自ら貢献すべきである。しかしながら遺憾なのは、現在のあらゆる大国の中で、ただ中国だけが、依然として権威主義の政治の中にあり、またそのために連綿と続いて絶えることのない人類の災禍と社会の危機を招いており、中華民族の自らの発展を制約し、人類文明の進歩を制約している。ーこのような局面は、必ず改めねばならない!政治的民主の変革は、もう引き延ばすことはできないのだ
このため、我々は、勇気をもって実行するという公民の精神に基づいて「08憲章」を発表するy.我々は、同様の危機感・責任感・使命感を抱くすべての中国公民に、官民を分けず、身分を問わず、小異を残して大同につき、積極的に公民運動に参加し、共に中国社会の偉大な変革を推進し、一日も早く自由・民主・憲政の国家を作り上げ、わが国の先人が、百年あまりも粘り強く追い求めてきた夢を実現するよう希望する。