リアルなものー消すことができない痕跡

リアルなものー消すことができない痕跡

アメリカのようにイギリスでも原理主義ブームが吹き荒れていて、当時、'やさしい聖書入門'の類の本がベストセラーであった。ロンドンのICA講演会のとき、これを憂う聴衆からの質問にたいして、ジジェクがあたえた答えは意外なものだった。いや、「聖書」を読め、「聖書」に神をやっつける方法がちゃんと書いてあるはずだからという。同様に、現在、現代語訳「古事記」が売れに売れているのだが、これは日本会議の方向から古事記を再神話化する、(グローバル資本主義に対抗する)救済神学的な様相をもつ超ウルトラナショナリズムの源になることを警戒する必要があるだろう。その場合、「聖書」と同様に、やはり「古事記」においても、「古事記」を再神話化する日本会議の「美しい日本」の文化論を相対化する方法が書いてあるのだろうか?一考の価値はある。古事記天皇による支配を正当化しようと神話的に隠ぺいしようにも、かえってクニの成り立ちがいかに困難だったかというリアルな事実を神話の中に痕跡として残してしまったのではないか