オペラ<アンチ・オィデプスのアジア>

オペラ<アンチ・オィデプスのアジア>

太陽「植物の眠りのなかへ、動物の夢のなかへあなたが入っていく。そういうなかで成長する...」

▼と、夢から目覚めた、主人公の火星人(ソプラノ)はずっと自分が宇宙船に乗っているつもりだったのに、お母さんのお腹のなかにいることに気がつくんだね。大変だ、このままでは人間として生まれてしまうことになっちゃう。そこで火星人は、人間として生まれた後でも、自分が火星人だったということを示す痕跡(徴)を作っておこうとするんだね。▼舞台は子宮をおもわせる巨大なクラインの壺がいいんだろうとおもうがね、そのときどこでいいんだけど、グルグル高速で回る小さなものー例、洗濯機ーをおく。その上に座っているのは<特異点ハンプティ・ダンプティテノール)。そしてかれが監視している部屋が10個ぐらいある。▼さて火星人は自分がきた星の位置をあらわす目印を作ろうとするんだけど、お腹の中だから東西南北がわからなくて愕然としてしまう、生まれたあとのこと、お父さんに知られないようにお母さんの身体の内部に残した徴を読み解くには一体どうしたらいいかと思い悩んだりする(オイデプスコンプレックスの問題)。そこで、人間として生まれたあと、部屋の住人たちにテレパシーを自分に送ってもらうよう協力してくれないかとかんがえつく。▼だがそのためには、部屋の住人たちが民族主義の争いをしているところをなんとか仲良くさせようと大活躍。<特異点ハンプティ・ダンプティから脱出しようとするが、うしろから<エジプト軍>のフロイト(バス)が追跡してくる。そして海に。▼この絶体絶命の危機のとき、火星人は歴史修正主義者の精神分析と父の専制の権力に対して、かれらが解釈し正当化する太陽の国の戦争が人類に対する犯罪だったこと、権利のない国に反対すること、精神の自由のために誰一人も飢えてはならないと訴えたアジア憲法をつくることを呼びかけることに(合唱)

 

本多 敬さんの写真