ジェイムス・ジョイスの世界 No.3

ジェイムス・ジョイスの世界 No.3
 
「川は流れる。「イブとアダム教会」を過ぎ、弧を描く河岸から湾曲する海へと向かい、再循環する心地よいヴィーコ・ロードのわきを進み、ホース城とその周辺へわれらを連れ戻す」(’フィネガンズ・ウェイク’宮田恭子訳) 。欠乏なくかくの如く再生産してやまぬという自然の大いなる循環の意味を問う「宇宙の劇場」に於いて、労働というものを、すなわちその循環のどこにも属していない人間(ホモ・サピエンス)の労働ーペンマン(penmann)という贋金つくりーを指示するのはなぜなんだろうか?
(労働のなかに、そしてその労働のきびしさそのもののなかに、基本的な欠乏を否定し、一時的に死に打ちかつ唯一の方法を勝手によみだす人間学的窪みとそのナルシズムを嘲笑うためか?)