ジェイムス・ジョイスの世界 No.4

ジェイムス・ジョイスの世界 No.4
 
意識の流れstream of consciousnessとは、とどまることなく絶えず流動していく人間の意識の動きのこと。意識の流れの意味を問う「ユリシーズ」の挿話「さまよう岩々」において、ただひとりの意識の流れに限定することなく、N人の複数の意識の流れと偶然にみえるその交差を指示しているのはなぜか?意識の流れがある対象(ひとりの人物)に帰されるのではなく、他の何ものかへの関係が意識の流れに帰されるのであり、故にこそ意識の流れは他の人に伝達可能になる。意識の流れが対象(ひとりの人物)に帰属させられてはいないこと、つまり多様性が予め結合したかたちで主観に与えられてはいないことこそが、他人との意識の流れの交換を常に可能にするのではないか?そして、N人の複数の意識の流れと偶然にみえるその交差は、地球の表面をみることができる遥かなる未知の惑星から観察しなければならなかった。人類が共通に持っている地球の表面に対する権利を自分達の間の交流のために行使することをジョイスは表現したのではないだろうか。