だれが日本ファシスト達を見逃してしまったのか

政治家・文部官僚・軍人・(「天皇機関説」を否定した)憲法学者・思想家・宗教家など日本ファシズムを具体的な形で推進した人々がリアルに存在していたのである。下の資料はその証拠の一つである。ところが丸山真男は自らこだわりを示したヨーロッパ市民社会の純粋理念型だけでなくファシズムの純粋理念型すら現実の日本に適用してしまったために、(理念型から説明されない)現実のファシスト達を見逃してしまったのである。ファシズムを計画的に推進したドイツと比べて、戦前日本の場合をみるとだれがいつファシズムをはじめたか明確にわからないと、東京裁判を読んだ丸山はそう結論した。丸山の言葉に「実」(まこと、誠)が無いと私が思うのは、こういうことである。敗戦後、戦後民主主義の権威として戦後言説の中心にいた自身の言説の網目からー例えば「内なる天皇」とか「日本の古層」-、ファシスト達が戦争責任を免れることになったという言説的問題を、丸山は一度でも考えたことがあっただろうか?現在たしかに、ヨーロッパに極右翼たちは存在する。報じられているように、ヨーロッパ民主主義の深刻な問題となっている。だがその現在の極右翼(ネオナチ)は、過去の裁かれたファシストとの連続性が切断されたところにしかいないということを知る必要がある。それに対して、日本の極右翼たちが戦前の形そのままで現れてきているというのは、全く質が違うことなのだ。日本ファシズムを推進した政治家・文部官僚・軍人・憲法学者・思想家・宗教家が裁かれなかったのである。戦後はこのなかから(復員した軍人たちから)、連続的に(!)、極右翼の組織・団体が形成されていくのである。このファシズム前夜、忘却に委ねないために、あえて丸山真男を問題提起した!

 

国立公文書館のツイートより

天皇機関説事件」の渦中にあった、昭和10年8月3日、岡田啓介内閣は「国体明徴に関する声明」を発表し、美濃部達吉憲法学説「天皇機関説」を否定しました。同年9月、圧力の高まりに抗し切れず、美濃部は貴族院議員を辞職しました。」