ジェイムス・ジョイスの世界 No.7

ジェイムス・ジョイスの世界 No.7

知識人にとって一番難しい本は何かという調査です。難しいというのは、結局注釈がないから、あるいはあっても十分にないので解釈が難しくなるだけ、と、こう割り切って考えてしまおうと思っています。読む人間にとっての解釈はもしかしたら付随的なことかもしれないと思うこともあります。むしろ本はいかに本を読むかということ、本がいかに本を解釈するかということがもっといわれてもいいと思います。人間は本をたすけるただの媒介者です。つまりその意味は、フーコーが言っていたように、言葉が拡散したとき人間が現れたならば、言葉が集中するとき人間は消滅するでしょう。本が主体ということですが、私はこの世から消滅するまえに、自分が読んだジョイスなりベケットを、何冊か分かりませんが、100冊に読んでもらおうと思っています。現在は「論語」が私の中で「ユリシーズ」を読んでいます。将来は、「百年の孤独」に、この私を介して、「ユリシーズ」を読んでもらおうと。多分これからはもっと、本がどの本を難しくおもうのかが問われるべきで、その方が色々面白い発見があるのではないかと思っています。「ユリシーズ」は、「白鯨」を凄く近くに感じ易しく読むでしょうが、(同時代の「意識の流れ」でかかれたといいわれる)ウルフ「波」をものすごく遠くに感じ難しく読まなければならないでしょうね。最後に、人間が消滅したらなにもかもゼロになってしまいますから、その本の読み方を知っているのだと威張って知の権力をもつという不愉快な人間にかぎって消滅していただきたいものです。ジョイスの本はモダニズムの勝利とみなされている本ですから、近代知識人にとってそれが最も難しい本という意味以上の意味があるということは見逃せませんね。

 

 
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