言葉と物のコンパクトな世界 No. 8

言葉と物のコンパクトな世界 No. 8

 「さしあたりまったく確実なこととしてわれわれの知っている唯一の事柄といえば、人間の存在と言語の存在が、共存してたがいに連接しあうことは決してできなかったという一言にほかならない。二つのもののこの非両立性こそ、われわれの思考の基本的性質のひとつであったのだ。」世界と共有するものがなく、本の世界の中にしか生きていないような人間達。ツルゲーネフが観察したように、ドンキホーテは理想を追い求めるあまり誇大妄想に陥った狂気か?ハムレットは決断を下さず懐疑や苦悩に籠る狂気の人?だが彼らの前の時代は人間の存在と言語の存在とが思考において共存していたかもしれないのだ。彼らをみる世界の視線が変わっただけなのだ。「我々は、最近現れたばかりの〈人間〉というものの明白さによって、すっかり盲目にされてしまっているので、世界とその秩序と人々が実在し、〈人間〉が実存しなかった、それでもそれ程遠くない時代を、もはや思い出の中にとどめてさえいないのだ」。それほど遠くない時代には、人間の存在と言葉の存在が思考において共存していたとしたら、多孔性の、染みとおる、(他者などが)侵入しやすい宇宙であった.かもしれない..(注釈によってしか構成できない、孔子とその弟子達の存在とまだ未編集の先王の言葉の存在のように。)

 

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