ジャン=リュック・ゴダールの世界 No.9
理念としての音のあり方をかんがえさせる。小さな声の理念性、聞くことの理念性から、音の理念性のことが語られる。だれが最初にきいたのか?この人のまえに、声というものをきいたものはいないし、音というものもきいたものも存在しなかったのだ、と、ゴダールは女性たちの映像を呈示しながら問いかけるようだ。(つまるところ私はまた思い浮かべる。火が部屋全体を生じさせながら燃え尽きるときの、孤独でひそやかな絹の音を。それはひとりつぶやき、あるいは私に話しかける、ほとんどつぶやきのように)
photo from Histoir(s) du cinéma, Gallimard-Gaumont 1998