論語の世界 No.12

論語の世界 No.12
ー消えた八文字はどこへ行ったのか?

江戸時代は、学問文化の中心は京都、経済の中心は大阪、政治の中心は江戸にあるというネットワークを形成していました。物は情報(知)を運びますからネットワークにおける大阪の重要性を認識しました。問題となってくるのは、文化(京都)と政治(江戸)の間の「壁」をいかに通り抜けるのかという問題です。その意味で、 伊藤仁斎を再発見することは京都を再発見することでもある、と、そんな気分になってきました。「この幕藩制国家が成立して半世紀が経過しようとする十七世紀日本の京都の市井の儒者仁斎は、『論語』こそが第一であると主張し始めたのである。」(子安宣邦氏)。だが「思想革命」の志向をなすラジカリズムである「最上至極宇宙第一」という八文字は、テキスト表面から削り去られました。危険を避けて、仁斎の古義学的達成の徳川幕藩体制下における認知と普及に務めたからと考えられます。その代わり、道徳の領域から幕藩体制における政治の領域を徹底的に批判できるという可能性をもつことになりました。そうして京都は朱子学の江戸を脱構築していくとも解釈できるかもしれませんが、消えた八文字はどこへ行ったのでしょうか?再びどこにあらわれるのか?今日のわれわれの突き動かされて対抗的に道徳的批判を破廉恥で下劣きわまりないあの連中(安倍や石原、自民党政治家)にぶつかる憤りのなかにその痕跡があるような...?