ジェイムス・ジョイスの世界 No. 16

ジェイムス・ジョイスの世界 No. 16

世界中の言語に翻訳されている「ユリシーズ」。世界中に存在するジョイス読みは、電話のブルームが呼びかけるように、外からやってきた他者に"hello"と声をかけるべきだという。予定調和的とはいえない、おそるべき偶然の一致かもしれないが、このブルームにたいして何百頁先のモリーがyes,yes,yesと応答するとしたら、なんという迂回だろうかとデリダは言うのである!他者と出会う偶然も迂回もない「世界ー内ー存在」のハイデガーに対して、ジョイスは見事に「ブルームー電話ー内ー存在」で脱構築してみせたのだとデリダは読んだ。なんのために?つまり「ユリシーズ」は、スマフォンの数行の伝達では何も伝わらないような、それほど厚い本なのだ。つまりかくも厚い本は、時代と国と等価であることを主張する本なのである。

 
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