ジェイムス・ジョイスの世界 No.31

  • ジェイムス・ジョイスの世界 No.31

  • 「なぜ古典はいつも魅力的で、私たちを成長させるのか」。古典を読むことの喜びは世界文学を読むことの喜びだとわたしは気がつきはじめています。しかし単純ではありません。「古事記」と「万葉集」は、ホメロスユリシーズ」と同様に、世界文学を構成する古典群のひとつでしょうが、必ず読めるとは約束されていません。古典だからこそ古典には、もはや読むことが不可能となっている部分が沢山あることを知る必要があります。また、津田左右吉を読めば、「古事記」の支配を正当化する神話が読めない教説であるということも分かります。「万葉集」で読めるのは、(文字を読めない)農民達の防人としての苦しい思いを訴えた歌を書き記した部分でしょうか。たとえば、これを、祖国奪回という英雄伝のむなしさをホメロス叙事詩脱構築する形で語る世界文学ージョイス「ユリシーズ」ーと比べて読むというのは、大事だろうとおもっています。現代日本における安倍政権が推進する徴兵制に対する解毒剤になるかもしれませんから、いや、正直それを期待していいのかはわかりませんけれど、ネットの場を利用してもっと文学と社会の関係を意識させるようなそういう読みがあってもいいとおもうのです。その意味で、「私たちを成長させる」という方向性ですね。