ナポリをたたえる

ナポリをたたえる

ポンペイの火山の灰に覆われて地中のなかの古代ローマ劇場は、こうだっただろうという形で(なぜか、ローマ時代に先行するはずの、いわばオリジナルとしての半円形古代ギリシャ劇場!)、火山の岩で再建されている。それがコピーであると聞かされる人々の中には、「本物」を掘り出せと要求する者がいるが、もはや「本物」を一生懸命掘り出す必要もないだろう。その「本物」も既になにかのコピーだったのだ。大地の下で層を成す石に関して確かなことはただ、ナポリに来たベンヤミンが言った意味で、porous(多孔性の、侵入されやすい)という状態というだけ。確かな「本物」を探して求めて、ますます境界が曖昧に脆弱になっていく深さへ行くのは、日本語の起源をもとめてどんどん遠くいかなくてはならないナショナルなものへの欲求の場合をおもいおこさせる。