ロッセリーニをたたえる

ロッセリーニをたたえる

・ヌーヴェル・バーグをはじめ戦後の新しい映画の表現の可能性をいかに拡大したかについてロッセリーニ「イタリア旅行」の意義が強調される。だが、この映画のなかで、愛が冷めた夫婦の妻を演じた、イングリッド・バーグマンに起きた感情移入をはっきりと説明できる者はいただろうか?ポンペイで発掘された男女の遺体を見たとき、バーグマンは初めて原初的な愛を感じたのであった。つまり、民族の愛を呈示した映画は戦前にあったが、それとは異なる、人間の愛を観客に見せた映画は「イタリア旅行」の前に存在しなかったのである。‬