ジョイスを考えるー「フィネガンズ・ウエイク」

「フィネガンズ・ウエイク」は‪五十数ヶ国語で作り出された。そのためにジョイスとて外国語を学ぶ度に屈辱的に文法に束縛された。彼はシュールレアリストとはいえない。レヴィストロースの深い洞察にしたがってシュールレアリスムをブリコラージュの概念で再構成してみても、やはり「フィネガンズ・ウエイク」をシュールレアリスムの作品として理解できないだろう。そもそも近代の作家は「職人」ではない。書くことは、記号によるメッセージに統合されることのない目的のない過程である。「野生の思考」ですらないということもあり得るか。

鳥のジョイス文学。‪境界線が属するのは地上の文化だけで、天と地を循環する海を囲い込めない。生成する運動を無理に統合するから分裂の危機が起きる。天を一つにしてきたのも統合