平田篤胤「霊の真柱」(岩波文庫)

子安宣邦氏の解説によると、平田篤胤による「古史」の策定は、記紀二典の他に大小の古史・古記録から選択された合理的なものであった。(宣長の構想にもとづく)「天-地-泉」と不整合な「顕/幽」の二元論的配置、この宇宙生成論的構成をもった宗教的教説によると、「霊」は社が無ければ「其墓の上に鎮まり居り」という。驚くべきことに、「霊の行方」は近傍として構成されていたのだ。宣長国学は徂徠の言説に負いながら思想闘争によって自立を獲得したが、更に篤胤は宣長の内部に絡みとられることなく民衆の救いを考慮した方向性をもって自立していくのである。