源氏物語

紫式部は「日本書紀」を読んでいたといわれる。このことの意味を考える。「公の世界」にいる貴族男性と対等の漢字書記能力と知識をもっていたが、「私の世界」を表現する為に仮名で書くのである。(奇妙にも近代がこだわりを示す"女性的な文体"とか"男性的な文体"が内在的にあるわけではない。) 物語とは何かという問いも物語のなかに書かれていることに驚くのだけれど、現在世界文学となっている、「源氏物語」の誕生の場、式部もそこにいる、せいぜい百人ほどの貴族女性たち(読み手であり同時に書き手であったいわば前衛集団)は、終わろうとする古代の、言語の一番端に存在している...‬