‪『ユリシーズ』

‪『ユリシーズ』は冒頭から終わりまでアイルランドのことしか書いていない。それなのに最後の頁の署名<トリエステチューリヒ、パリ、1914-1922'に、ダブリンの印がない。なんとも奇妙だ。恰も、それはヴェール=帆で隠されている。今日まで一度も、'ダブリン'と名づけられたことがなかったかのようだ。ジョイスが揶揄した世界、公の僧侶達が主宰する物質世界から脱出する亡命とは、かくもわが身を守るものとしてあったのだろう‬か。

モリーの最後の言葉は本当ならば、'No!No!No!'であるべきだったとされる所以である。