帝国

ネグリとハートがいうように、「帝国」がグローバル資本主義という帝国ならば 、見捨てられた帝国とは何かという問いが立つ。「いくつものの異世界帝国」は、言説としての混在なもの(エテロクリット)を住処とするのだろうということは一考の価値がある。ところで、それにたいして、世界帝国とは、柄谷行人の意味では、グローバル資本主義の分割である。アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、中国のそれぞれが世界帝国であるという。いくつものの世界帝国のことがいわれるだけである。非在郷(ユートピア)の言説がいくつものの世界帝国を語るのだろう。フーコはいう。「非在郷(ユートピア)というものは人を慰めてくれる。つまり、それは実在の場所を持たぬとしても、ともかくも不思議な均質の空間に開花するからである。たとえそれに近づいていくということが幻想にすぎぬとしても、それはひろびろとした並木路のある庭園、安楽な国々をひらいてくれる。」