ジョイス『ユリシーズ』

ユリシーズ』は英国植民地都市ダブリンを物語っている。マーテル塔を舞台にとった挿話テレマコスのなかで、リベラルは自分達を<独裁>の側にいるとみなすのをやめてくれと言いたいようである。彼らが依るイギリスはリベラルの第三項がある故に、<民主か独裁か>という単純な対立から自由な民主主義であるといいたいのだろうか。アイルランドは心配しなくていいと。しかしそのリベラル達はpointlessなのである。なぜならいくら独裁に異議申し立てするリベラルでも彼らが植民地主義を否定しないならば、アイルランドからみると、イギリスの問題は<民主か帝国主義か>として現われるからである。また、いかに反帝国主義帝国主義に近づいてていくのかというナショナリズムの問題も挿話キュクロプスで暴かれている。4、ジョイスはユダヤ人を主人公にしたのは彼らは当時最も抑圧された人々だったからである。今日ジョイスが生きていたならば、帝国主義は終わったが、帝国の時代に起きてきた、<民主か帝国か>の問題を問う文学を書くだろうね。その文学の主人公はイスラムか中国の人々にちがいない