『ゴダールのマリア』(1984)

‪『ゴダールのマリア』(1984)は、アンヌ=マリー・ミエヴィルの短篇映画『マリアの本』とゴダールの長篇劇映画『こんにちは、マリア』(Je vous salue, Marie)の二部構成で成り立っている。『ゴダールのマリア』は言説を考える映画である。映像は、だれかが語った言葉ではなく、何が語られたのかとの繊細な関係をもつことによって、ある言説が言い出された意味の読みが成り立つという。映画の関心は、力ー異なるものどうし(映像と音と言葉)の関係ーの生産にある。この映画『マリア』は極右翼とフェミニズムの両方から非難された。前者はゴダールはアンチ・カトリックだとしてマリアの裸体像を公に晒した映像に反発し、後者はゴダールカトリック神秘主義に陥っているとして映画の女性の地位を貶める物語に抗議したのである。映画を読み解くだけでは不十分である。映画がもたらしたこの波紋からなにを読みとるか?世界は、映像がもつ言葉との繊細な関係を物語った言説としての映画を産み出し、またこれを否定したのである。一方に力ー異なるものどうしの関係ーの生産があり、他方に力を否定する抑圧が存在している。‬‬映画は誰々が語る主義と矛盾から切り離されている言説のスクリーンである以上、こう言わざるを得ない、映画が自らに投射する世界それ自身が無矛盾の映画である、と f:id:owlcato:20190414110828j:plain