‪ゴダールの『男の子の名前はみんなパトリックっていうの』(Charlotte et Véronique ou Tous les garçons s'appellent Patrick 1957)‬

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ゴダールの『男の子の名前はみんなパトリックっていうの』(Charlotte et Véronique ou Tous les garçons s'appellent Patrick 1957)‬

ロメールが脚本を書いた、ロメール的‪ゴダール。この時代のゴダールは、政治的コミットメントからの離脱、大義の忘却、社会変革に無関心、美のスタイルだけを追う芸術至上主義。速度を享受し、優雅に、ワインを飲んで、饒舌と美女と車を愛する。ナンパの物語とお喋りを解説するほどつまらないことはないので、ウィキに要領よくまとめられているあらすじを引用しよう。

「シャルロットとヴェロニックは、パリにアパルトマンをシェアする学生である。ふたりはリュクサンブール公園で待ち合わせをする。先に着いたシャルロットは、がまんできずに、パトリックという青年に求愛され、一杯飲まないかと誘われ、約束をする。シャルロットがいなくなったところでヴェロニックが着くと、おなじくパトリックが近づいてきて、おなじ会話をし、翌々日に約束をする。ふたりが部屋に戻ってくると、シャルロットもヴェロニックも、それぞれの「パトリック」のことを話す。次の日ふたりは、街で女性に親しくあいさつする青年(パトリック)を目撃し、パトリックがいつもだれに対してもおなじことをしていることがわかってしまう」。‬

‪このナンパ劇からは、シャルロットとヴェロニックは本質的には同じもので、優先順位がちがうという見方もできるかもしれない。案外これは、深遠なロゴスのことにかかわるものかもしれない。生死を認識するとき生死は本質的に同じものであり、ただし認識の順番があるので、生を考えたあとに死を考えるという。なにか、八十年代からの天地の間を還相する映画のコスモロジーをおもうのである。‬