ジャコメッティ

ロダンバルザックの身体を隠していても、彫刻そのものの現前を堂々と保っている。比べると、ジャコメッティの彫刻の異様さは、モンマルトルの遠くに見えた人物達の姿をヒントにしたといわれるが、作品そのものが消えてしまいそうだというギリギリの表象にある。パリに展示するときに、マッチ箱の中の彫刻を封筒に入れたという。このときは、スイスの彼が非常に恐ろしがったファシズムの時代だった。この時代に、どうしてこんなに小さいものを作ってしまったのかについて色々と解釈がある。この場合は、「中から出してくれ」ではなく、こんな嫌な時代から隠遁したいから「中に入れてくれ」の声を彫刻家は聞いたのではなかっただろうか?かれの彫刻は、(わたしはよい読者とはいえないけれど)サルトルの本、「存在と無」の表紙に定位している。

 

 

自動代替テキストはありません。