2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

柄谷行人「探求1」を読む

1985年から「群像」に連載していた評論のうち、最初の一年半分を収録したという。柄谷行人の「他者はない」といきなり切りつけてくるような評論の言葉は毎回、なんというか、'事件性'とよぶようなものすごい衝撃波があった。「探求1」の86年が、最後だったの…

今年はいつ「全体主義の起源」を読むのか?

今年はいつ「全体主義の起源」を読むのか? 日本会議の戦前そのものを再生するという主張は他に例がない。ネオナチは多くの場合では、自国の労働者の雇用拡大を掲げて外国人労働者の排斥を訴えるなど、就職問題に絡んだ活動で参画者を募っている。さらに左右…

丸山真男を読む

カール・シュミットのいう中性国家Ein neutraler Staatとは、 丸山真男の解説によると、真理とか道徳とかの内容的価値に関しては中立的立場をとり、そうした価値の選択と判断はもっぱら他の社会的集団(たとえば教会)又は個人の良心に委ね、国家主権の基礎は…

アイルランドで考えることになった、講座派と労農派の話

知識としては知っていたけど、講座派とか労農派の話に関心をもったのは、アイルランドにいたときなんだね。アイルランドといえば世界で最も貧しい国の一つとおもわれていたが、よく調べてみると、戦前日本のほうが一人あたりの農地所有というか耕作面積のほ…

原理主義という名の純粋理性

ネコ経済相「放浪者ですが、天下の智恵者を連れて参りました。マイナス金利にどんな可能性があると国民に説明したらよいかニャ?さあご助言を」 フクロウ博士「 アベノミックス....」 ネコ経済相「うんうん、にゃんにゃりと総理にいいたまえ」 フクロウ博士…

小林秀雄が気がついたように「日本の歴史にかつてない変化が起こった」。日本ファシズムは満州事変から始まった。日本ファシズムに始まりがあったのに、なぜ丸山真男はかれの「敵」を見逃したのか?

日本ファシズムに始まりはなかったと丸山真男は言う。「内なる天皇」という我々の責任に還元されてしまう。だが大正期のリベラルな思想を語る教科書と昭和期の起源を物語る教科書は決定的に違った。天皇機関説を反故にした学者がいたし、皇国史観をつくった…

宮崎駿氏の結論は賛成、理由は若干異議あり ー あえて世界史的に「人類のため」としないと

結論は賛成、理由は若干異議あり、です。傾聴に値する宮崎氏の真摯な訴えですけれど、あえて世界史的に「人類のため」としないと。「沖縄の人のため」と言うことはもちろん正しいですし間違いではありませんが、広く国際社会に訴える、ナショナルな次元を超…

政治が苦手な私の四つの疑問ー「柄谷行人 政治を語る」

柄谷行人はマルクスに接近するためにカントから語り始める。彼は倫理の問題に言及する。ここは素晴らしい問題意識なのだ。 ▼「カントにとって、道徳性は善悪の問題ではない。自由の問題です。そして、自由というのは、自発性という意味です。たとえば、カン…

啓蒙主義はひとつではない。啓蒙主義は多様なのだ。

啓蒙主義はひとつではない。啓蒙主義は多様なのだ。啓蒙主義というと、フランスとかドイツの特権とおもわれているが、スコットランド啓蒙主義というものがある。思想的自立をもつスコットランドはイギリスの文明に対抗できるのだ。ここの歴史がわからないと…

柄谷行人「倫理21」(2003)を読む

柄谷行人「倫理21」(2003)を読む 柄谷行人は天皇の戦争責任について語っている。昭和天皇は引退すべきだったと言いたようだ。柄谷は敗戦直後の状況を振り返る。 「戦後の最初の首相は皇族東久邇稔彦ですが、彼は首相としての最初のラジオ放送で、「一億総懺…

ソクラテス、アルキビアデス、ディオゲネス

「哲学の起源」の柄谷行人は言います。「キュ二コス派(犬儒派)の抵抗が有効だったのは、まだポリスが栄えた時代の名残があった時期だった。帝国の支配の下でポリスがいっそう無力化すると、プラトン派もキュニコス派も共に無力となった。その後、キュニコス…

和辻哲郎を読む ー 「人間の学としての倫理学」

月に一回の「論語塾」で「童子問」を読むとき、これが本当に300年前に書かれた思想なのかと感嘆を禁じ得ない。思想史の視野からみると、朱子学という世界思想に挑む伊藤仁斎の、かくも深く考え抜いた日本思想は、18世紀でピークを迎え、それ以降は量の拡大は…

「残念ながらわが国にはヒットラーがいなかった」と丸山真男がいうように本当にそれほど日本の戦争は誰が始めたのか不明なのか?

「残念ながらわが国にはヒットラーがいなかった」と丸山真男がいうように本当にそれほど日本の戦争は誰が始めたのか不明なのか? 「超国家主義の論理と心情」(「世界」1946年)では天皇制を分析する。天皇制は、自由な意識主体を前提とした独裁とは異なるとい…

動乱の時代の秩序オプティシズム?

動乱の時代の秩序オプティシズム? フーコとの関係でドゥルーズDeleuzeをみてきた私にとって、立ち寄った本屋さんでドゥルーズの特集とかインタビューのCDとかをみて、こういう風に、ドゥルーズだけを前面に出す(売る?)というのは、なにかヤバイというか、…

内包量について

高校生のときに読んだ遠山啓。わかりそうでいて全然わからなかったのだが、「小論理学」を読む労働法ゼミのときに(いや、コンパだったかな?)、かれが引いているヘーゲルの言葉に再び出会った。だがやはりわかりそうでいて正直わからなかった。遠山はカント…

柳田国男論序文(2013年) ー帝国の思想家・柄谷行人の秩序オプチミズム

柳田国男論序文(2013年) ー帝国の思想家・柄谷行人の秩序オプチミズム 1986年に書かれた柳田国男論を読むと、柄谷行人にとっては、「柳田は江戸時代の注釈学者の姿勢と近似するのである」「柳田は儒学者徂徠に近かった」ことが強調される。なぜか?▼それは柄…

柄谷行人「世界共和国へ」を読む

テートモダン常設展('詩的想像力')の最初の部屋にキリコGiorgio de Chiricoの作品が飾られています。なぜこの絵が?と最初思ったがここに通っているうちに段々とみえてきました。▼だがカントの本の表紙をキリコの絵が飾るという必然性が理解できたのは、カン…

復興「日本精神の形」は本当にそれほど平坦で紋切り型だったのか...?北一輝の場合

復興「日本精神の形」は本当にそれほど平坦で紋切り型だったのか...? ▼昭和ファシズムの種は大正時代にありました。1923年の関東大震災が大きな契機となりました。当時の社会を眺めますと、関東大震災から五年後に岩波文庫が創刊されています。当時ヨー…

デカルトの後のスピノザは自分の考えをラテン語で書いたのは理由は何か?

なぜダンテとシェークスピアは普遍言語のラテン語で書かずに、地方言語のイタリア語と英語で書いたのはなぜか?普遍主義の代名詞のラテン語と哲学との結びつきは揺るぎないようにみえたが、デカルトは地方言語のフランス語で哲学を書いた。学術研究の領域に…

再びかんがえる・・・

再びかんがえる・・・ 絶望的に時間の無駄とあきらめていた私にふたたび、こうして政治に考える試練を与えてくださった戸倉氏と平井氏のお二人に感謝申し上げます。昨年は、本来ならば自民党の御用学者として発言してもいいような憲法学者たちが、ーかれらは…

歴史的に、東アジアの市民運動から成り立ってきたデモクラシーの「知」を、国境を越えた市民の間でいかに共有するかを考えることは大切だとおもっています

歴史的に、東アジアの市民運動から成り立ってきたデモクラシーの「知」を、国境を越えた市民の間でいかに共有するかを考えることは大切だとおもっています 日本の政治のことについて考えるのはもはや時間の無駄のようにおもってきたから、そう感じたときはそ…

思想史は運動Bewegungをどのように語ったか?

思想史は運動Bewegungをどのように語ったか? 1、運動の哲学は、機械論ー目的論の対立にかかわっている。アリストテレスは、運動を、可能態の現実化として目的論的に捉えた。中世でも、目的論的自然学が支配的で、運動も目的論的に捉えられていた。しかし近…

西田幾多郎を読む

小林秀雄は西田幾多郎を痛烈に批判したといわれる。なぜか?「西田の孤独が日本語では書かれておらず勿論外国語でも書かれていないという奇怪なシステムを創りげていった」と指摘したのだった。▼これはなにか、小林がテクストの内側に絡みとられていかない為…

3・11以降安倍自民党がつけあがっている現在は、関東大震災の<後>に起きる復興幻想を契機に右翼思想が現れ始めた戦前の歴史について再び考えてみることは無駄ではないでしょう

3・11以降安倍自民党がつけあがっている現在は、関東大震災の<後>に起きる復興幻想を契機に右翼思想が現れ始めた戦前の歴史について再び考えてみることは無駄ではないでしょう。必ずしも大川周明が本当のことを言っているとは思いません。昭和14年に書かれた…

安倍内閣の大臣から「ナチスの手法」を口にするのは、許してはならないものなのだ。ヨーロッパの極右翼がナチスを称えるのは本当に怖い。なぜか?

安倍内閣の大臣から「ナチスの手法」を口にするのはこれを許してはならない。ヨーロッパの極右翼がナチスを称えるのは本当に怖い。なぜか?▼議会主義的功利主義者たちがナチスに向かって'あなたのこの常識が無意味だ'とか'あの常識が無意味だ'と指摘しても通…

柄谷行人「哲学の起源」(岩波書店) を読む

柄谷行人が「古代イオニアのイソノミア(無支配)」と呼ぶものは、「語る小さな人間たちの大きな人間をただす力」(小田実)と比べられるかもしれません。本の紹介の言葉をひくと、「アテネのデモクラシーは、自由ゆえに平等であった古代イオニアのイソノミア(無…

和辻哲郎「日本精神史研究」を読む

「平安朝は何人も知るがごとく、意力の不足の著しい時代である。・・・意志の強きことは彼らには醜悪に感じられたらしい。・・・一切の体験において、反省の不足、沈潜の不足となって現れる。彼らに進む力はなく、ただこの両端(地上生活のはかなさと地上生活…

文化多元主義について批判的にかんがえる

文化多元主義とはなにか?文化多元主義とは多文化性ー社会における異文化の共存をいう。文化多元主義は過去の植民地主義を克服しようとする、したがって、社会の根底にどんな本質も措定しない差異化の戦略である。この文化多元主義は元々は、68年に起きた同…

東アジアの左翼は中近東の問題の全体をどう考えるのだろうか?

70年代に石油危機のパニックのときから、右からは'野蛮'、左からは'中世神権政治'、中道からは''恐ろしい異界'という調子でスケープゴートとされたのがイスラムだ。現在「聖戦」の非民主主義体制に席巻されたが、「アラブの春」の民主主義の起きた後に、サイ…

ジャーナリズムは文学と互いにどんな関係をとったのか?

ホーキング、かく語りき?子供が一番尊敬する人はホーキングという時期があったが、ベッカムにかわられてしまうとき、詩のワークショップに来たイギリス人男性にきいた。物理学者もサッカー選手も出版資本とマスコミが作った資本主義的偶像だと言う。こんな…