2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

子安宣邦氏『日本人は中国をどう語ってきたか』(2012)

‪私を惹きつける本は、他者との関係から自己との関係を新しく構成しようとして、その他者と共に考えようとするー現場から送ってくる電報の言葉も拾うーというわれわれが通過するそんな扉をもつ本である。『日本人は中国をどう語ってきたか』(2012)の題は、『…

天下の「公」

グローバル資本主義は、或る目的と利害を以て喋る「私」を介して、何でもかんでもカネが物を言う。市民的不服従の自由で平等な理性的存在者が依るのは「私」に非ず。ロールズの正義としての公正は、漢字によって言うと、これなしには道徳性がやっていけなく…

権力と権威

権力は民主主義の抗議に対して権力を行使したら、その権力は権威を失う。やっていけない。確かにこういうことはヨーロッパにおいて実感できた。アジアは同じなのか?認めたくないのだけれど、民主主義の声を抑圧した権力が益々権威をもってしまうではないか…

清沢満之

‪二つのものを二つとして保つこと、清沢満之が宗教と道徳に行ったことだ。明治維新から批判的距離をとることができた。(モンタージュの原初性はここに。) だが文学者は宗教だけにしてしまう。二つを一つにする全体化の方向は、われわれのうちに他者を失わせ…

オリンピック

世界の多数派を構成していますけれど、貧しい国の場合は、世界記録保持者といえども、国は渡航費と滞在費を出せないのですね、私の上司の教え子(大学生)がそうでした。家族と話合った結果、オリンピックの本来あるべき姿ではないそのコマーシャリズムの傾向…

アジアのポスト構造主義

‪革命とは支配者が変わるだけで、支配の構造それ自体は変わりません。だけれど反近代の原理主義が他者否定の理性を以て革命の政治災害を正当化します。同じ反近代からする「生命」という名の民衆史的ユートピアにも同じ危険があるかもしれません。そして現在…

操り人形の糸

なぜ操り人形の糸を描くのかと問われると、堅っ苦しくではなく、いかがわしい変な絵と想像していただければ十分ですが(笑)。操り人形というのは、なんか「主体がない」単純な感じですが、折角複雑なものをなんで単純にしてしまうのですかね?近代の人間は常…

『仁斎論語』

『歎異抄の近代』を開いてこんなことを考えた。17世紀が12世紀をいかに読んだかを学んだ四年間を以て、読むことの不可能な過去の思想の痕跡を見ることができるようになった。しかしまだまだである。もし解釈する権力のすべてを失ったら、2500年前において始…

普遍主義のアジア

‪ヨーロッパだけに普遍主義が存在したのではないこと、だけれどヨーロッパにだけ近代が起きたこと、ここから帝国主義における支配する国と支配される国の間の分割が成立したこと、この知を前提に、1990年以降の後期近代にたいしては、水平方向に、政治多元主…

失うこと

たしかに文学にその痕跡はあるとおもうのですね。<いったん'得た'>ものについて考えてみようとするのですが、どうも、'得た'ものは無かったようにおもうのですね。それなのに、わたしの中で、<失うことになった>といつも感じているのはどうしてなのか。この…

失うこと

たしかに文学にその痕跡はあるとおもうのですね。<いったん'得た'>ものについて考えてみようとするのですが、どうも、'得た'ものは無かったようにおもうのですね。それなのに、わたしの中で、<失うことになった>といつも感じているのはどうしてなのか。この…

知識人

知識人というのは、本を読む視線にすんでいる。差違はその超越論的な不安のうちに、ただ言語にだけ住みつくことができるものなのだ。その中で、他者、開かれた知に、Hello!といえるほどの人は読者を得る可能性がある。ところが、それまで考えてきたことに反…

「人間宣言」

クーデターのテロリストたちは‪五箇条ノ御誓文に「王政復古」を書いた。京都から勝手に連れ出してきた天皇に政治責任を押しつけることの問題とは、責任をもたぬ政府を成立させてしまうことにあった。今回「人間宣言」(昭和二十一年一月一日)をはじめて読んだ…

「ゆきゆきて神軍」

公開されたときは、渋谷で三回みたかもしれない。監督の制作ノートも読んだ。‪「ゆきゆきて神軍」では、観る前は、世直し的救済論の危うさを描いているのかなとおもっていたが、寧ろ倫理的なものに突き動かされている人間への視点にとらわれた。決して単純で…

排除

コインに表と裏があるように、共感というのも常に両方の面を考える必要があると渡辺一民さんは言っていました。三浦さんの映画評をちらっと読むと、共感の欠如を問題にしていました。ここから、世直し的救済論に絡みとられると何か怖いかんじがします。「わ…

ゴダール「カルメンという名の女」(1983)

原発の政治的災害が「文革」の政治的災害の意味を私に問うことになったとき、「カルメンという名の女」(1983)がゴダール映画の中で最も愛する作品だとストレートに言えなくなった。「文革」を終わらせない反近代主義の敗北の逆説が、この映画における盲目の…

死の分裂化 ー ポストモダン<死>

ポストモダン<死>‪『鬼神論』を再び読んだあとに、厄介な風邪も治ってきたところで、これから『平田篤胤の世界』を読もうとしているのだけれど、改めてこれは何を問おうとしている本なのかと考えてしまった。2018年の現在、2001年に出たこの本から新しくなに…

カフカ『変身』

‪『変身』の家はこうだったりして?天とのリズムを保ちながら、グレゴールの魂が虫の死体を住処としたように、情念は外部にすんでいる‬。情念は概念に先行する。概念は情念によって再構成される。傍の虫からじっと見られながらカフカはゲーテ文学論からの諸…

映画の字幕

映画の字幕の役割は大きい。例えばフランス映画の映像に対して、日本語で読む観客の無意識が介入してくるので。映画と等価の、時には、それを超えた大きさをもつ怪物があなたの座席の横で増殖している

津田左右吉

‪宗教社会学のマックスヴェーバはカウンターウエイトの語を以てピューリタニズムのあり方を分析した。ピューリタニズムを構成していく世界は現実世界に対するカウンターウエイトを作っていく。昨日は子安氏はカウンターウエイトのことに触れたうえで、津田左…

芸術とは何か

何でもかんでもカネの問題に還元するブルジョア近代に耐えられないし、それを正当化するマッチョ主義(ナショナリズム)を直視したくない。芸術というのは、逃げないでやっていくカウンターウェイトではないか。国内亡命の場所はどこに?

香港最高裁

政治的多元主義香港最高裁は「雨傘運動」指導者らの実刑判決を破棄したという。アジア民主主義における多様性のあり方をはじめて問う判決かもしれない。学生のとき、研究会のOBに、当時は引退していたが、私大から初めて最高裁判事となった方がいた。彼の脱…

フーコー『言葉と物』

フーコー『言葉と物』のどの頁も普遍主義に対する問いかけが書いてあると渡辺氏はいう。演劇の面白さも俳優に知識人(普遍主義)のあり方が描かれているからという。だがどうしてもロゴスが脚本を住処としている。新しい普遍主義は映画カメラの卑俗なものから…

寺山修司

寺山修司の名を知ったのは覗きで捕まったと伝えた新聞報道だった。映画撮影と演出をやっていた方から、「君は俳優になるしか生きていけない。その言葉遣いは駄目だ。寺山は青森弁を日本女子大で習ったと自慢してた」といわれた。寺山の芸術に感じる心たちを…

安倍晋三とはだれだったのか?

安倍は信念をもたないという意味で自民党の中でも際立った特別の政治家だという気がします。彼の歴史修正主義も、特定の信念に裏づけされているのではなく、全く信念がないからこそ、成り立っているというかんじですね。この男は、自分の支持率を保つためな…

ユダヤとアラブ

‪なーんか変な夢をみつづけるよね。風邪で頭がボーとしていて、どうしたんだろう?妄想が泉みたいに次々わいてくるんだけれど。と、ロンドンのユダヤ人とイスラム人が朱子と弟子たちの議論を読んだらどういうことになるかなんて、風邪だからかんがえることだ…

『江戸思想史講義』

‪江戸思想史は、わたしの中では、伊藤仁斎で始まり本居宣長でおわるというものであった。だがそれはいつの間にか勝手に思い描いてしまっていた風景に過ぎなかった。中国語訳の江戸の思想史の空間を参考にしながら、『江戸思想史講義』(1998)は目次をみると、…

ジョイスを読む

ジョイスを読む‪『フィネガンズ・ウェイク』における父娘間の近親相姦の徴よりも大事な問題は、大きすぎる父と天の存在である。父と天は書かれた言葉を住処としている。書かれた言葉の高さを嘲笑うのは、『ユリシーズ』の中の挿話「イタケ」だった。「教理問…

フーコを読む

固有なものに対するこだわりはいつの時代にもみられる。17世紀より前の時代も、固有なものに対するこだわりがあったことはあった。17世紀から新しくはじまったことは、それが、人間とその思考において、展開することになったのである。17世紀に固有なものに…

MEMO

To write, for me, is to draw, to knot lines so that they become calligraphy, or to loosen them so that the writing becomes a drawing.ー Jean CocteauDans une société totalitaire, les mécanismes de l’endoctrinement sont simples et clairs. Ma…