"太陽神の牛"『ユリシーズ』

‪Deshil Holles Eamus ‬ 


‪"太陽神の牛"(『ユリシーズ』)が好きだと言っていたルーマニア人がいた。トリエステで出会ったが、奥さんが妊娠中らしい。”太陽神の牛”は産婦人科病院を舞台としている。ブルームはピュアフォイを見舞い、そこで医師ディクソンに誘われて、医学生の宴会に加わる 。書き出しの言葉は、アイルランド語Deshil, 英語の地名Holles とラテン語Eamus で構成されている。呪術的雰囲気で、どうも、Let's go south to Holles Streetと言っているらしい。"南行保里為佐"と訳した丸谷才一によると、「『保里為』は地名ホリスに動詞「欲りす」の(『古事記』)万葉仮名をあてる」という。訳者が『古事記』の言語に対応していると思ったのはなぜかはとくに説明がない。わかるひとはわかる、わからないひとはわからないということ?私はわからない。‪ ‪

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Deshil Holles Eamus  


"太陽神の牛"(『ユリシーズ』)の書き出しの言葉は、アイルランド語Deshil, 英語の地名Holles とラテン語Eamus で構成されている。これは呪術的雰囲気で、どうも、Let's go south to Holles Streetと言っているらしい。"南行保里為佐"と万葉集風に訳したのは丸谷才一であった。”太陽神の牛”の多様な文体を書き分けた丸谷訳は、努力が実ったか分からぬが、まあ大変な作業だっただろう。歴史感覚も必要だ。そして英文学史平田篤胤の登場では彼の文体で書いた。現代の文学的難産と神学的救済論。英文学史の最後に、起源が不明の、ダブリンの乱痴気騒ぎの英語が生まれ出る。バベルの災厄以降、言語はアイルランドにおいて見事に復活したのである。


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