避難所という理念 ー現代思想の多様性をいかに保つかという問題をかんがえるためにー

避難所という理念 ー 現代思想多様性をいかに保つかという問題かんがえるために ー

フランス系現代思想の若手の研究者によると、現代思想がヨーロッパで停滞しているという。しかしここで、まだ現代思想を?ではなく、寧ろ日本を現代思想の「避難所」にしようというヴィジオンは全くその通りだとおもった。かれの場合は芸術の理念であったが、岡倉天心の、戦争マッチョ主義へいく国の方向に抗議した言葉を思い出させた、この積極的な発言をもっとききたいと私は願っている。ただヨーロッパだけが現代思想をもつのではない。民主化の道を行くアジアもまた現代思想をもちはじめたのである。そしてこのアジアにおいて、柄谷行人「世界史の構造」がジワジワと影響力を広げているということをきくとき、残念ながら、彼の「帝国の構造」にかんしては、民主主義の思想の活発よりも停滞の原因をつくっているかもしれないことを憂慮するのだ。('デモのない社会よりもデモのある社会のほうがいいにきまっている'というとき、ただしそのデモが帝国の理念に反しない限りにおいてと「帝国の構造」は教えてくるのだ。) 思想の多様性を保存する「避難所」をつくることとあわせて、同時に、いかに責任をとるのかという問題がでてきたこともいまから考えておかなければならないとおもうーわたしは全然力が足りないのだけれども。あれほど思想の同時代性を強調してきたのだから、現代思想の停滞にたいしてわれわれはそれほど無実ではなくなってきたことだけはたしかである。