真の多様性を自分たちのものにするためにおそらく理念的再構成が必要とされたのですが、ところがEUそれ自身を揺さぶる戦争が起きてきます。20世紀の終わりに展開されることになったアメリカの対イスラムの戦争を契機に、ヨーロッパはその近代がヨーロッパでないものを排除することによって成り立ったという限界が露呈しはじめたのですね。(イギリスのアフリカ系の人々が受け入れることができない言葉ですが)、EU離脱を訴えた極右翼のスローガン We are on our own は、実は、イスラムを排除したヨーロッパの、したがって現在EUのWe are on our ownと表裏一体をなすものではないかと考えています。国家の戦争している敵対的他者を揶揄することの危うさも自覚されないほどの We are on our own となっているかもしれないこの声を、フッサールならばこれを「純粋な自己ー触発」と呼んだかもしれません。そうであれば、問題は、「外部性の助け」とデリダがいうものが消滅しつつあることにあるとおもわれます。