ゴダール

‪パリに着いた。わたしはフランスの絵画も文学の知識もないから、フランスの文化的抵抗といわれるものがよくわからないでいる。哲学は文化より寧ろ政治に結びついているようにみえるしね。映画を文化とみとめてくれるならばの話であるが、映画からする抵抗のことについて少しばかりのことを言えるかもしれないが。ゴダール「映画史」は全体として、とくにその後半は、映画は消滅してこそ輝くというような絶対の過去をたたえる芸術史上主義的意味づけを行なっているが、「映画史」(1A、1B)のゴダールの構想はこれとは別のものである。70年代後半から80年代の問題意識が強く反映されている。映画の歴史とは何か?歴史感覚を以って発明された美術史や文学史のなかにある映画史は広さをもっている。それはヨーロッパのなかにあるフランスの広さと等価である。両者は相補的な関係にあるから、グローバル資本主義によってフランスが消滅すれば「映画史」も存続できないのである。表象の分析家はゴダールの過剰なもの言いに当惑するだろうが、そもそも映画における表象などを分析する必要もない。映画を現実と区別する必要がないとおもう。またそう言わなければわからないからそう言うのである。