感想文 ー 東京演劇アンサンブルの『泥棒たち』(デーア・ローアー作、公家義徳演出)

‪東京演劇アンサンブルの『泥棒たち』(デーア・ローアー作、公家義徳演出)を観ました。ドイツの現在を伝えるこの芝居は、奇妙な、狼に対する畏怖と夢から始まります。思考できないものを思考しようとしているかのようなそんな始まりです。家族は解体していますが、抑圧的に、資本主義と適合し得る父長制的文化だけが残っているようですね。登場人物たちは時々自らナレーターの口調で自身を第三者的に語るとき、かれらの疎外の経験を物語っているとおもいました。芝居の最後は、アイロニーを以て、人間関係の回復の可能性が示唆されていたのかもしれません。しかし、冒頭における、狼(未知の他者)に対する畏怖と夢は消えてしまうことにならないかと私は自問しました。『泥棒たち』で問われていたのは、狼という決して消すことのできない外部の痕跡だったと考えることになりました。大変難しい芝居に取り組みましたが、役者たちはそれぞれ成長しているなあとおもいました。若い男性俳優たちはよくやりましたがもっと頑張れるでしょう。大いに期待しています。‬