ケインズ

アイルランドは自分たちの歴史的な経験から、イギリスにおける人道主義は植民地をもつ帝国主義と両立していることを知っている。実際にイラク戦争のときは、人道主義を根拠に爆撃が行なわれたのである。だから英国知識人たちは、イギリスの明治の啓蒙思想に影響を与えたような功利主義啓蒙主義を以て、戦争とそのコスパを指摘して、人道主義を正しく方向づける努力をする必要があったとおもう。さて平成保守思想は「伝統の依拠すべきは大日本帝国である」と言っていたらしいが、これは、近代から(自分に都合よく物語った)「伝統」をみているだけだろう。敢えてこのことをいうが、「まことの保守」は、ケインズを読んでいたというが、ほんとうに読んだことがあるのか?帝国主義は、知識人としてのケインズがとった構成ではない。私はケインズが面白いのは、若いときかれが深く関わっていた芸術家の共同体から新しい思想の可能性について考えてみようとした時代があったからだ。ブルームズベリー・グループからの知的な影響は明らかだろう。‪経済学は芸術と倫理学にすんでいる。‬私が思うに、想定された共同体の対自的・対他的なあり方は、「神よ、何という苦しみだ!これほどの強烈さで何事をも感じてしまう力を授かったのは、恐ろしいことだ」(『波』』1931)と書いたウルフの言葉に言い尽くされていたのではなかったか。これに対して、ケインズは、再構成しようとした倫理学に、客観性の基盤を与えようとしたのではなかっただろうか。‪アイルランドは自分たちの経験から、イギリスにおける人道主義は植民地をもつ帝国主義と両立していることを知っている。実際にイラク戦争のときは、人道主義を根拠に爆撃が行なわれたのである。だから英国知識人たちは、イギリスの明治の啓蒙思想に影響を与えたような功利主義啓蒙主義を以て、戦争とそのコスパを指摘して、人道主義を正しく方向づける努力をする必要があったとおもう。さて平成保守思想は「伝統の依拠すべきは大日本帝国である」と言っていたらしいが、これでは、近代から(自分に都合よく物語った)「伝統」をみているだけだろう。敢えてこのことをいうが、「まことの保守」は、ケインズを読んでいたというが、ほんとうに読んだことがあるのか?帝国主義は、知識人としてのケインズがとった構成ではない。私はケインズが面白いのは、若いとき自分が深く関わっていた芸術家の共同体から新しい思想の可能性について考えてみようとした時代があったからだ。想定された共同体の対自的・対他的なあり方は、「神よ、何という苦しみだ!これほどの強烈さで何事をも感じてしまう力を授かったのは、恐ろしいことだ」(『波』』1931)と書いたウルフの言葉に言い尽くされていたのではなかったか。これに対して、ケインズは、再構成しようとした倫理学に、客観性の基盤を与えようとしたのではなかったか。‪名ばかり戦勝国で、真相は、戦後イギリスは乞食だった。ケインズはアメリカに乗り込んでいったとき、英国とヨーロッパに金をくれと要求しただけではなかった。戦争を繰り返すことを防ぐ為の世界における金融秩序のあり方を堂々と説得したのであった‬