「心斎橋大丸と青山学院の建築原図展」を見学した

「心斎橋大丸と青山学院の建築原図展」

きょうは北夙川不可止さんのご案内のおかげで、歴史的な日本アールデコ建築の美しさを発見いたしました。前と後のことを想像しました。この大正建築が誕生する<前>に、これを懐胎していた世界アールデコの理念は何であったかと暫く考えたのです。建築素人の私がみても、亀甲的八角形とか鳥獣戯画イソップのイメージを観察するとき、たしかに大正アールデコ建築は日本的テクストにおいて誕生したといえるのです。このことから、そうして対象について考えることができるのも、そもそもこの建築がそこに現存することによってですが、さらに、その<前>に他のものが存在していたがそれはいったい何であったかと考えることによってではないでしょうか。普遍的理念と日本的テクストとの関係のことです。それは距離のことかもしれません。当たり前ですが、この当たり前のことが大切。その建築をそこの場所から失うことは、直になにかをそこから失うことですが、同時に、そのなにかが存在していた<前>にそこに他の何があったのかと共同体が問う身振りとジェスチャーを不可能にしてしまうことだとおもいます。このことは、場合によっては、その場所に生きる共同体にとって、現在の経験を差異化していく可能的な意味世界ー生きることの意味世界にかかわるーを失うことにもなると心配します。時間の中にある<他>の痕跡を共同体が失うかもしれませんから。建築と場所の保存は意味世界の保存であり、ここから、昔の映画の保存の場合と同様に、建築と場所の保存は倫理的な問題に関わる問題だと気がついたとき、共同体の意味世界との関わりを、決して偶然に、つまり国の文化保護に関する無策と資本の恣意に、委ねてはならないということをあらためて今回の展示でよく学ぶことになりました。

青山学院間島記念館にて6日まで