ジャン=リュック・ゴダールの世界 No.12

ジャン=リュック・ゴダールの世界 No.12

グレコGrécoは光と闇のテーマも読み取れます。価値あるものが価値のないものに覆われてしまうのか、逆に、前者が後者を包摂するのかをめぐるギリギリの均衡をみてとれますが、この均衡を占拠しているのは、近代の(自己完結した)考える人間ではなく、かといって再び宗教でもなく、どうちでもないようなどうも信の構造というかそれがみえる穴だらけの天が描かれているのかもしれません。これは市民大学で講義したことがあるゴダール「パッション」のシナリオに使われた図ですが、絵の中の会話を想像してくださいという無理な課題を出したような記憶があります。当時は実は私自身もよくわかっていなかったのですが、今なら少し想像できるようになりました。天(マクロコスモス)と人(ミクロコスモス)との関係を書いている「論語」を読んできたおかげかもしれません。ここ絵画のなかでは重力がないのに、しかも立派な翼をもっているにもかかわらず神の子の子孫は(天の音楽を聴くことができない)価値のない地上世界に落ちて行くしかないとしたら、さあ君たち人間は一体どうするんだね?天の至上の音楽にかわるもの、天の音楽と対等なものは何か?という問いかけを読み取りました。ヴェイユ的読みかもしれません。17世紀迄にはグレコはマニエリスム共々忘れ去られていったのですが、20世紀ピカソによって再発見された意味を考えています。ポンピドーセンターでの展示のときゴダールピカソと比較されるのですね

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