大杉栄

‪「マイナスの価値(日本はダメだ)をいうのはいくらでもできるよ、こんな簡単な国ないよ。しかしプラスの価値を言うのが大事でしょう。これからどう生きるんだということ…を、言わなければいけない。そうしたら、若者はついてくると思う。そういう話を聞きたがっています。」ー小田実 2006‬


「日本はダメだ」を最初に言ったひとがいた。それは誰だったのかは正確に特定できるはずである。言説「日本はダメだ」の誕生の日付は、大逆事件以降だろう。そうだとして、これと正反対の方向から、すでに、大杉栄は人間がこれからどう生きるんだということを語っていた。プラスの価値を書く白紙の本を書く。そこで分節化されない思想の優先順位を言っていた。大逆事件は繰り返し、人間が定位する思想の自由をとらえて離さない。思想は国家による処刑の恐怖にとらわれたままである。敗戦後も、日本帝国主義との共犯関係が検証されることなく、曖昧に継承された「大正デモクラシー」は大杉栄をもつことがないから、思考の自由が成り立つことがないのである。