ゴダールの『右側に気をつけろ』(Soigne ta droite 1987)

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‪ブレア労働党サッチャーリズムの先駆が八十年代のフランスの左翼と右翼の連立政権で、ゴダールは、左翼政党に野党の立場を貫いて欲しいと考えていたといわれる。『右側に気をつけろ』(Soigne ta droite 1987)の物語のメインストリームは、ゴダール本人が演じる「白痴公爵殿下」。(『子どもたちはロシア風に遊ぶ』(1993年)でも同じ役柄を演じることになる。)殿下が手にするドストエフスキー『白痴』の主人公ムイシュキン公爵からの引用であるが、この名はニヒリズムと嘲弄の時代の感情をあらわすように読める。右側のなかで、反証の精神が眠りこけた国家、売れない落ち目の芸人たちに率いられた滑稽さと言ったら...。クルクルまわってめまぐるしく連続衝突するだけで、自己否定的な理念の運動もなくなった記号は、フランスの腐敗を描こうとしているが、果たしてフランスだけなのだろうか?‬