何を言うのか?舞台が終わったあとに始まる

何を言うのか?舞台が終わったあとに始まる

1935年、フランクフルト。ある医者のユダヤ生まれの妻が出国を決意します。列車の中でのように板上の俳優が舞台の道に沿って移動していくのを観ながら、観客は通話中のこの妻がユダヤ人の公職追放が始まる中、いかに夫の仕事に影響が出ることを心配しているか心の不安を読み取ることになります。しかし彼女がいる領域はそれほど心の中の領域、プライベートな領域であるとはかぎりません。舞台の電話というのは、常にマイク、ピープル拡声器なのです。自発的に、俳優 (洪美玉さん)は誰に呼びかけるのでしょうか?共同体と人間の崩壊の危機を公の観客に呼びかけているのに、観客の方は街頭の過行く人々の如く抗議の言葉を電話での個人の独言にしかみようとしないなら、これをいかに説明したらいい現象か?このギャップこそが、現在日本というポスト第三帝国の恐怖と貧困を構成するものではないでしょうか。