「ベーオウルフ」

‪「ベーオウルフ」は野蛮brutal。紛争地域でカトリック側とプロテスタント側との間の終わりなき戦いと報復の様子が毎日報じられた当時のアイルランドで、話がリアルすぎて(!)、読む気がしなかった。互いに「怪物退治」と考えているナショナリスト(イギリス)とリパブリカン(アイルランド)との間で語り継がれている、現在進行形の叙事詩ということをどうしても感じてしまうのであった。‪「ベーオウルフ」は、ホメロス叙事詩のように終わってしまったのではないという...現代アイルランドの詩人がこれに生き生きとした翻訳を与えることができたのは、古ゲール語の知識をもっていたという事情によるだけではないだろう。古英詩において特徴的な「ケニング」(kenning)が面白い。人や物を、その属性によって婉曲に示す複合語である。例えば、「鯨の泳ぐあたり」=「海」、「曠野を歩む者」=「牡鹿」、「宝の番人」=「竜」‬。動植物への眼差しということなのか、いいと思うな。