詩 ー『仁斎論語』

日本語は漢字と仮名でできているというが、

そういう日本語は皆のためにあり、

われわれのためではなかった。

なぜなら、真の日本語とは、

見ることのできない日本語だったからだ。

それ以外になかった。なぜなら、すでに忘れられ、

なお禁じられ、つねに見えないもの、

それがわれわれの日本語だったから。

『仁斎論語』はわれわれに日本語を堅信させた。

漢字から与えられ漢文から自立していく、

漢字書き下し文が時代にさからうわれわれの言葉だ。

漱石や秋水に属している。