映画『パッション』のシナリオ」(1983)

映画『パッション』のシナリオ」(1983)は、ゴダールが自分の映画『パッション』について語る短編映画。スクリーンは語る人の背後にあるべきではないという考えをもって、スクリーンに向き合うゴダール。語り終わったとき、暗闇のなかにいるその彼の背後に向かって、暗闇のなかに広がっていたような光が溢れだすようである。と、海の広がりのなかにいるゴダールの姿。これらが意味するものはなにか?闇が光に、光が闇に生まれ変われるメタモルフォーゼか?この編集は、暗闇の卑近にあるのは光しかないというほどの無分節の世界の記憶を蘇らせるものであると考えてみたら、それによりどんなことが言えるか?人間は、スクリーンを背後にして語る自己を否定する観念によって(スクリーンに向きあうことになる)、平等に差異が差異としてあるような真の意味での多元世界に来るのではないか。これは形而上学の映画である。絶対的な<自分が語るのを-聞き-たい>ということである。(映画館の暗闇は自分がどういう階級であるかを隠してくれたとデユラスは少女時代を回想している。)f:id:owlcato:20190409002220j:plain