オリヴェイラ「家族の灯り」の感想文 (2)

映画の宣伝が繰り返す、百歳超えてつくったという見世物的関心はどうでもいいこと。やはりオリヴェイラからは、(かれが関わった)ポルトガル革命のことを消し去ってしまうことはできなかったのではないかと考えた方が幸せです。映画では、革命運動に投じた刑務所帰りの息子(夫)の存在を、中流の下の家族 (父親、母親、妻)がどうみるのかが描かれていたかもしれません。映画の名である、'家族の灯り'とは、なんとアイロニーに響くではありませんか!?それは、なんでも盗み人としてしか理解しない無知の息苦しさを嘲笑う言葉として現れてくるからです。帰ってきた息子が父親に向かって「負け犬!」と吐き捨てるのは感動的でした。生きている間にどれだけのプラスの善を行い一方どれだけマイナスの悪をしたかという、善悪の総計する人生のバランスシートばかり腐心している説教型道徳的「負け犬」たちがこの国においても蔓延しているかもしれません