ベケットは、戦中は中立を保っていたアイルランドにいた方が生きる確率が高かったのに、ナチスがいたフランスに残ったのか?

ベケットBECKETT は、アイルランド出身の作家。小説はわざわざ、まず外国語の仏語で書いたあとに英訳した。異常といえば異常。そして、なぜ、このベケットは、戦中は中立を保っていたアイルランドにいた方が生きる確率が高かったのに、ナチスがいたフランスに残ったのか?母国アイルランドにいては、<信じる>という必要がなかったのではないか。つまり、ファシズムが間違いであると<信じる>ことがなければ<考える>こともそもそも成り立たなくなる。それがフランスだったのだ。たとえば、未来に人間のもとにゴトーという真理が来ると信じるのは、無意味である。モダニズムの精神においては、考えるために、徹底してなにもかも否定されるべきである。とはいえ、信じることまで否定してしまうと、考えることそのものが成り立たなくなってくるのではないか。だからベケットは、考えるために信じなければならないことを書いたと思う。これがアイルランド流のベケット理解である (たまたま、キートンの映画をやっていたベルファーストの映画館で隣に座っていたのが、ベケットの自伝作家JAMES KNOWLSON )