『ゴダール・ソシアリスム』とは何か

f:id:owlcato:20190406004221j:plain

ゴダール・ソシアリスム』は、2009年製作、2010年公開、ジャン=リュック・ゴダール監督によるフランス・スイス合作の映画である。ゴダールは芸術の世界に受け入れられている。この映画に哲学者アラン・バディウ(Alain Badiou)が出演しなければならなかった理由を映画評論家は気にならないようだ。しかし芸術に生きる人々にとっては大切なことである。おそらく問題はこの映画の名にかかわることである。哲学者と詩人とでは廃墟を見る見方が違う。哲学者からは、かつては世界と思考のあいだには共通のものがあったのに、現代はどんどん失われていくばかりだという嘆きが伝わってくる。ノスタルジックに偉大な世界があったと語る。詩人からは、世界そのものがもう感じられないこの世界は失敗している、生きるに値しないと訴える。さて映画は終わったと語ってきたゴダールは哲学者と詩人の両方をもっているようにみえる。このことを伝えるために、映画にソシアリスムという名を与えたとおもう。ほかの名ではあり得なかった。