レンブラントの『放蕩息子の帰還』

Rembrandt, The Return of the Prodigal Son (c. 1661–1669. 262 cm × 205 cm. Hermitage Museum, Saint

レンブラントの『放蕩息子の帰還』。イメージとタイトルとのギャップがなんとも面白いですね、これは皮肉のきいた大袈裟なタイトルじゃないかとニヤッとしてしまうのですけれど。カトリックのスペインから追放されたあと、まだ父祖のポルトガル語は読めても、アムステルダムユダヤに帰るわけでもなく、「集会はやるな、家の中をいつも清潔にしろ」ぐらいしか言わなかった無関心なオランダ人たちに迎い入れられて、(プロテスタントユダヤ人はヨーロッパでは少数派)、そのまま自然に、宗教をもたない人々となったユダヤ人たちのあり方を、息子の半分だけの裸足のイメージに見ることができないわけではありません。ゲットーの内部ではありますが、近所のオヤジが、天から史上なものを地上で受け取る代わりに、同時代のありふれた建物の内部で卑近な人間を抱擁しているようにみえます。レンブラントはゲットーのなかに入っていった最初のドキュメント作家といえるかもしれません。フラファテイーと比べられるところがありますが、(人類学的な、あるいは柳田の民俗学的な)直接経験者の語りの映像化というものではないです。オランダ中産階級オリエンタリズムの視線をもって絵を買ったと思われます。いつの時代も、オヤジに、兄たちに睨めながらまたまた金を要求する放蕩息子が存在するものです。最後に現代の話。何が言いたいかというと、現代の文脈で絵を読み解くと、ポストモダンの放蕩息子たちが知識人を否定したまま、近代の父のもとに帰っていく姿ほど見苦しいものはないのですけれど、そうでもないですかね

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