ゴダールの『コンクリート作業』(Opération béton 1955)

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ゴダールのスイスで撮ったデビュー作は、『コンクリート作業』(Opération béton 1955)である。

伝記によると、ゴダールはモノー家追放に帰結した、混乱のパリ時代の後、ダンデイな青年となる。この青年はブルジョア両親の厳格なモラルと、時代の進歩的息吹に背を向けて無為に過ごしたという。デビュー作から、人間の創造のエネルギーを読みとるのか、あるいはその反対に、創造する近代に絶望しきっている、(ゴダールからするとどのページも嘘だらけの)伝記の言い伝えを念頭において破壊のエネルギーを読みとるのか、それは新しい時代の来たるべき<映画人>としてのゴダールをどう理解するかによることだろう。たかが映画じゃないか、どうでもいいことであるが、されど映画、映画も人文科学を構成するとすると、どういうことが言えるか。フランスのモラリスト(文学的な哲学者の意)の人間探求の特色は、その探求の結果、単に抽象的、概念的に羅列することではなくして、必ずそれを一つの可及的に生きた具体的な像に再構成して見せることであるが、コンクリート作業の<映画人>はこの伝統をもっているというふうにわたしは勝手におもっている。知識人ー本を読む人ーが映画を見るというのが新しかった(それまで、書くために映像が必要とされることがなかった) ‬